フィッギア！（22日の日記）

おっめでとう日本勢！
うわぁ皆さん検討してくれたよ！
試合見逃しちゃったけど！
いや、あの、うっかり戦国オロチ買ってガンガン進めてたら、滑り終えて点数に喜ぶ選手とコーチが映ってたよ･･････。
恐るべし！　魔王vs魔王！＜待て

「無理だな」
ゴウトの返答に、鳴海はぽかんとした。
「何で？」
「俺は、黒い物にしか乗り移れない。生きているものにもな。しかも一度死んだ器にしか適応できないんだ」
「俺、髪の毛は黒いよ？」
「･･････お前の毛根は死んでいるのか」
「失礼しちゃうよ！　地毛だよ地毛！」
「じゃあ無理だ」
おかわり、と杯を顔で押し、ゴウトは鳴海を見る。
注いでやりながら、ちょっと鳴海はそわそわした。
「･･････かつらだったら憑依できるわけ？」
「･･････試したことはないな」
「そ」
「うむ」
くすぐったい時間が流れる。
同時に杯を呑み、とん、と机に置いた。
「ねぇゴウト。俺の愚痴、聞いてよ」
「･･････俺の愚痴は」
「こっちは直ぐ済むから」
「･･････早くしろよ」
「はい、駄目～」
「は？」
「お前、物わかりよすぎ」
「･･････聞けと云ったのはお前だろ」
「そこだよ」
「は？」
鳴海は、ゴウトの首に手を添えた。
ごくりと上下する黒い喉。
「ゴウトってあんまり不満を云わないよね」
危うさと妖しさを混ぜて、顔にかけて撫でる。
警戒するゴウトの毛が、微かに逆立つ。
「最低限のことは云っている」
「もっとさ。こう嬉し恥ずかし少年の恋みたいなのしなよ」
「お前の青臭さは、時々恥ずかしくなるがな」
「俺もゴウトを見てたら恥ずかしくなるよ」
「何処がだ！」
「ライドウと一緒にいる時」
「･･････」
ほら、やっぱり。原因はそこじゃん。
「愛しちゃった？」
「･･････師弟の情は持っている」
「恋しちゃいなよ」
「知るか！」
「代々のライドウとそういう関係になったことは？」
「･･････」
「･･････まぁいいよ。今のライドウの関係が大切だもんね」
「俺は、」
「うん？」
「お前のことが心配なんだ」
目付の背を撫でていた鳴海は、面食らった。
「俺？」
「･･････危ういんだ。お前の存在は」
「えっと、俺、国家転覆とか企んでませんけど？」
「そうじゃない。死ぬ準備が出来てるってことだ」
わからない、と言い掛けて鳴海は言葉を呑み込んだ。
貫かれたのだ。
一対の翠に。
―――ごまかしはきかねぇか。

「ま、いつでも消える準備は出来てるけどね」
「自殺願望があるとは思えんが、逃げ道を用意しているだろ」
「･･････それは、ゴウトだってそうだろ？」
「だが、お前とは事情が違う。俺は生きているが限りなく死に近い。お前は、生きている者だ。死ねば、俺のように何か別の器に憑依することもできない」
「･･････だから？」
自分を大事にしろ、と？
「借金は自分で返せ」
「･･････は？」
鳴海は、唖然とした。
―――借金？
「俺は、お前の借金を肩代わりしてやるほど優しくない。だから、お前はお前で決着をつけて、生きるなり死ぬなりするんだな」
「･･････えっと、此処は嘘でも『頑張って生きろ』とか『俺達仲間だろ』とか暑苦しいこと云うんじゃない？」
「俺は、青臭くないし」
「俺が借金を自力で返すと思う？」
「頑張れ若造！」
「ゴウトの莫迦ぁ！」
わーん、と鳴海は机に突っ伏した。


酷いよ酷いよと、酔いの回ってきた鳴海は呟き続ける。
泣く男の頬を、ゴウトは舐めてやりながら、ぼそりと呟く。

「男に告白するのは、勇気がいるんだよ」

何処かに混ぜた本心に、自身も少し紅くなりながら、ふかふかの髪の毛に身を寄せたのだった。