朝に萌を聞かば 夕に悶え記すとも可なり
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尻切れトンボな気もしますが、後編終了!
包帯プレイは、また今度!
予定より長くなったのは気のせいです。
包帯プレイは、また今度!
予定より長くなったのは気のせいです。
やめろ、と囁かれて引き下がれなくなった。
せめて雷堂の声が低く擦れていなかったら、吐息が肌をくすぐらなかったら、鳴海も事務所まで待ったかもしれない。
果ては同じにしろ・・・・・・だが、どうにももう止まらなかった。
路地に引きずり込んで夢中で唇を吸った。
躰を擦りつけるようにして愛撫する。
やめろ。
合わせている少年の口が、そう動いたようだった。
やだね。
遊戯のようにそう返すと、雷堂が瞼を閉じた。
諦めたのかと少年の腿を触ると、肩に痛みが走った。
―――古疵の疼き。
糞っ、亡霊が。
苛立ちを肉欲の波に紛れ込ませ、もっと激しく攻めていく。
だが、引き攣れに引っ込めた腕を、雷堂が掴んだ。
はっとして見れば、もう一度「やめろ」と呟き、唇を離した。
「自棄になっているぞ」
視線で示された先は、案の定、血が滲んでいた。
雷堂の瞳は潤んでいたが、冷静さが宿っていた。
鳴海は、躰の芯が重く冷えていくのを感じた。
どうやら見抜かれていたらしい。
あの医者に、頭の怪我しか見せなかったこと。
躰を見せなかったこと。
民間人ではあり得ない疵のある躰の意味。
木を隠すには森の中。
怪我を隠すには、別の派手な疵の中へ。
詮索されるのが厭で、思い出すのが億劫で、わざと違う患部の治療など受けてみたのだが。
何処からか取り出した包帯を、鳴海の肩に巻いていく雷堂から目を逸らした。
だが、その白さが雷堂の肌の白さになり、あの医者が纏っていた白衣になり、当時手当された時の包帯になり、疵を追った過程になっていく。
意識を縛り付けていく白さ。
経歴を捨て、名を捨て、青臭い理想まで捨てたのは何だったのか。
歳を重ねても、未だに過去が躰を蝕む。
受け入れようと努力したこともある。
汝の敵を許せ? ならば汝を許すことも可能?
許したら、この苦しみから解放されるのか?
一時的には可能かもしれない。
癒される感覚を思い出すといいだろう。
あの一瞬の解放感・満足感・幸福感。
だが繰り返す内に、また過去の圧力に耐えきれなくなる。
酒だ。博打だ。女だ。
忘れる要素が必要になる。
狂う時だけ自由になれる。
快楽の園に無垢な自分がいる。
そこでなら汝の敵だろうが、汝だろうが何でも来い。
朝にはもう無関係の隣人なのだから。
「鳴海」
「・・・・・・気持ち悪いな。いきなり名前呼ぶなよ」
「貴様が巻き終わっても反応しないからだ」
もう夕陽は消えていた。
中途半端に下部に燻る熱に、鳴海は髪を掻き混ぜた。
「・・・・・・患部を動かすな」
文句を云う代わりに、鳴海は巻かれたばかりの包帯を荒々しく解いた。
「貴様という奴は・・・・・・!」
「俺は包帯が嫌いなんだよ。だから、代わりにお前が巻け」
「は・・・・・・?」
雷堂の返事を待たずに、鳴海は雷堂に包帯を巻いていく。
意味はないが、鳴海の中では意味がある。
相手に痛みを移した気になれる。
「・・・・・・何でお前まで巻き出すんだよ」
「決まっている」
雷堂は、少し苛立った口調で新しい包帯を取り出し、鳴海の患部に当てた。
「我が巻きたいからだ」
これには流石の鳴海も呆気にとられた。
「お前、冗談とか云えたんだな」
雷堂は肯定とも否定ともつかぬ仕草をした。
暗い路地で。
躰は大きい二人の男が、夢中になって包帯を巻く。
相手を白く染め上げる内に、段々と笑みが零れてくる。
互いに巻きあうことで、何かが通じたような気がするなんて。
少年にもその笑いは伝染したようで、鼻と鼻を擦りつけ合った。
結局、その日は鳴海は過去を明かさなかったし、雷堂も追求してこなかった。
ほっとしたような、寂しいような。
寝物語に語れる日も来るのだろうか。
何となく包帯を巻いてくれるような相手がいいな、と黒い髪を見ながら思った。
せめて雷堂の声が低く擦れていなかったら、吐息が肌をくすぐらなかったら、鳴海も事務所まで待ったかもしれない。
果ては同じにしろ・・・・・・だが、どうにももう止まらなかった。
路地に引きずり込んで夢中で唇を吸った。
躰を擦りつけるようにして愛撫する。
やめろ。
合わせている少年の口が、そう動いたようだった。
やだね。
遊戯のようにそう返すと、雷堂が瞼を閉じた。
諦めたのかと少年の腿を触ると、肩に痛みが走った。
―――古疵の疼き。
糞っ、亡霊が。
苛立ちを肉欲の波に紛れ込ませ、もっと激しく攻めていく。
だが、引き攣れに引っ込めた腕を、雷堂が掴んだ。
はっとして見れば、もう一度「やめろ」と呟き、唇を離した。
「自棄になっているぞ」
視線で示された先は、案の定、血が滲んでいた。
雷堂の瞳は潤んでいたが、冷静さが宿っていた。
鳴海は、躰の芯が重く冷えていくのを感じた。
どうやら見抜かれていたらしい。
あの医者に、頭の怪我しか見せなかったこと。
躰を見せなかったこと。
民間人ではあり得ない疵のある躰の意味。
木を隠すには森の中。
怪我を隠すには、別の派手な疵の中へ。
詮索されるのが厭で、思い出すのが億劫で、わざと違う患部の治療など受けてみたのだが。
何処からか取り出した包帯を、鳴海の肩に巻いていく雷堂から目を逸らした。
だが、その白さが雷堂の肌の白さになり、あの医者が纏っていた白衣になり、当時手当された時の包帯になり、疵を追った過程になっていく。
意識を縛り付けていく白さ。
経歴を捨て、名を捨て、青臭い理想まで捨てたのは何だったのか。
歳を重ねても、未だに過去が躰を蝕む。
受け入れようと努力したこともある。
汝の敵を許せ? ならば汝を許すことも可能?
許したら、この苦しみから解放されるのか?
一時的には可能かもしれない。
癒される感覚を思い出すといいだろう。
あの一瞬の解放感・満足感・幸福感。
だが繰り返す内に、また過去の圧力に耐えきれなくなる。
酒だ。博打だ。女だ。
忘れる要素が必要になる。
狂う時だけ自由になれる。
快楽の園に無垢な自分がいる。
そこでなら汝の敵だろうが、汝だろうが何でも来い。
朝にはもう無関係の隣人なのだから。
「鳴海」
「・・・・・・気持ち悪いな。いきなり名前呼ぶなよ」
「貴様が巻き終わっても反応しないからだ」
もう夕陽は消えていた。
中途半端に下部に燻る熱に、鳴海は髪を掻き混ぜた。
「・・・・・・患部を動かすな」
文句を云う代わりに、鳴海は巻かれたばかりの包帯を荒々しく解いた。
「貴様という奴は・・・・・・!」
「俺は包帯が嫌いなんだよ。だから、代わりにお前が巻け」
「は・・・・・・?」
雷堂の返事を待たずに、鳴海は雷堂に包帯を巻いていく。
意味はないが、鳴海の中では意味がある。
相手に痛みを移した気になれる。
「・・・・・・何でお前まで巻き出すんだよ」
「決まっている」
雷堂は、少し苛立った口調で新しい包帯を取り出し、鳴海の患部に当てた。
「我が巻きたいからだ」
これには流石の鳴海も呆気にとられた。
「お前、冗談とか云えたんだな」
雷堂は肯定とも否定ともつかぬ仕草をした。
暗い路地で。
躰は大きい二人の男が、夢中になって包帯を巻く。
相手を白く染め上げる内に、段々と笑みが零れてくる。
互いに巻きあうことで、何かが通じたような気がするなんて。
少年にもその笑いは伝染したようで、鼻と鼻を擦りつけ合った。
結局、その日は鳴海は過去を明かさなかったし、雷堂も追求してこなかった。
ほっとしたような、寂しいような。
寝物語に語れる日も来るのだろうか。
何となく包帯を巻いてくれるような相手がいいな、と黒い髪を見ながら思った。
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