朝に萌を聞かば 夕に悶え記すとも可なり
カレンダー
ブクログ
最新記事
最古記事
カテゴリー
ブログ内検索
最新トラックバック
プロフィール
HN:
タカシ
性別:
非公開
×
[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
でも定吉さんをアップするのは、初めて?
ブログに先行アップです。
後ほどSSページ行きにできたらいいな!
ブログに先行アップです。
後ほどSSページ行きにできたらいいな!
軍服を着て闊歩する途中、彼の書生に会った。
いつもの通り、一人と一匹、黒と黒の集合体で、此方に向かってくる。
猫と何やら話していた書生は、私に気づいたのか、瞬きもせずに、私の視線を撫でるようにして眼を合わせてきた。
ぞくりとする。
昼間から官能を刺激されて舌打ちしたいところだが、同時に芝居がかった意識が表出して、私は、軽く視線で頷き通り過ぎた。
軍人と書生が話し込むのは、目立ちすぎる。
何より今は、目立った行動をするのは早計だ。
―――次の角は、袋小路だったな。
薄暗い路地にわざと足を運んで、それを待った。
へらりとした表情を一瞬だけ見せて。
腹部に一発。足を引っかけて、首筋に手刀。
瞬き一回分の時間で襲ってきた輩共を次々に地に沈めて、自分も膝を折った。
対象を引きずり起こす為ではない。単に、払われて落ちた帽子を拾うだけだ。
と、その場に似つかわしくない拍手が聞こえた。
「お見事です」
薄暗い入り口に眼をやると、案の定、書生が立っていた。
「君の獲物だったのかね?」
「僕の獲物でもありました」
うっすらと微笑む書生に、これは怒っているのだな、と察しがついた。
「私は、狙われただけだ。君が早く始末してくれていれば、私も余計な手を出さずに済んだのだよ」
半分は嘘だ。
最近、軍人を狙って暴行を繰り返す集団がいると聞いて、無防備に軍服を着てふらふらと歩いてみたのだ。
あまりにも簡単に「魚」が掛かったので、少々拍子抜けをしたが。
自分が餌になる「悪のり」も、暇つぶしにはなった。
―――後始末は違う者に任せるとしよう。
だが、それを少年に語る程、私は無粋ではない。
「私は被害者だよ、ライドウ君」
「貴方なら尾行を撒くこともできたでしょうに」
応えずに、帽子を被り直した。
少年の傍らを通り抜けると見せかけて、少年の後頭部を掴み、壁に叩きつけた。
怒りとも嗜虐ともつかぬ電流が全身を駆けめぐる。
「どうして私が、このちんぴら共を相手したかわかるかね?」
黙したままの書生の背に体重をかける。
「君と、こうする為だよ」
その細い顎を掴み、無理矢理振り向かせた。
「・・・・・・こういう時は、眼を閉じるのだよ」
「閉じるような接吻けをして下さい」
定吉さん、と。
娼婦のような流し目を一つ。
手を離してやると、さして動揺も見せずに書生は去っていった。
「・・・・・・物騒な奴だな」
さりげなく刀に添えられていた白い指を思い出して、溜息を吐いた。
上着のポケットに手を入れると、ヤタガラスからの招待状が入っていた。
「物騒な奴だ」
彼の少年は、帝都を滅ぼすかもしれない、と、ふと思った。
PR
この記事にコメントする