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朝に萌を聞かば 夕に悶え記すとも可なり
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でも定吉さんをアップするのは、初めて?
ブログに先行アップです。
後ほどSSページ行きにできたらいいな!





 軍服を着て闊歩する途中、彼の書生に会った。
 いつもの通り、一人と一匹、黒と黒の集合体で、此方に向かってくる。
 猫と何やら話していた書生は、私に気づいたのか、瞬きもせずに、私の視線を撫でるようにして眼を合わせてきた。
 ぞくりとする。
 昼間から官能を刺激されて舌打ちしたいところだが、同時に芝居がかった意識が表出して、私は、軽く視線で頷き通り過ぎた。

 軍人と書生が話し込むのは、目立ちすぎる。
 何より今は、目立った行動をするのは早計だ。

 ―――次の角は、袋小路だったな。

 薄暗い路地にわざと足を運んで、それを待った。






 へらりとした表情を一瞬だけ見せて。
 腹部に一発。足を引っかけて、首筋に手刀。
 瞬き一回分の時間で襲ってきた輩共を次々に地に沈めて、自分も膝を折った。
 対象を引きずり起こす為ではない。単に、払われて落ちた帽子を拾うだけだ。
 と、その場に似つかわしくない拍手が聞こえた。

「お見事です」

 薄暗い入り口に眼をやると、案の定、書生が立っていた。
「君の獲物だったのかね?」
「僕の獲物でもありました」
 うっすらと微笑む書生に、これは怒っているのだな、と察しがついた。
「私は、狙われただけだ。君が早く始末してくれていれば、私も余計な手を出さずに済んだのだよ」
 半分は嘘だ。
 最近、軍人を狙って暴行を繰り返す集団がいると聞いて、無防備に軍服を着てふらふらと歩いてみたのだ。
 あまりにも簡単に「魚」が掛かったので、少々拍子抜けをしたが。
 自分が餌になる「悪のり」も、暇つぶしにはなった。
 ―――後始末は違う者に任せるとしよう。
 だが、それを少年に語る程、私は無粋ではない。
「私は被害者だよ、ライドウ君」 
「貴方なら尾行を撒くこともできたでしょうに」
 応えずに、帽子を被り直した。
 少年の傍らを通り抜けると見せかけて、少年の後頭部を掴み、壁に叩きつけた。
 怒りとも嗜虐ともつかぬ電流が全身を駆けめぐる。

「どうして私が、このちんぴら共を相手したかわかるかね?」

 黙したままの書生の背に体重をかける。
「君と、こうする為だよ」
 その細い顎を掴み、無理矢理振り向かせた。

「・・・・・・こういう時は、眼を閉じるのだよ」
「閉じるような接吻けをして下さい」
 定吉さん、と。
 娼婦のような流し目を一つ。
 手を離してやると、さして動揺も見せずに書生は去っていった。

「・・・・・・物騒な奴だな」
 さりげなく刀に添えられていた白い指を思い出して、溜息を吐いた。
 上着のポケットに手を入れると、ヤタガラスからの招待状が入っていた。

「物騒な奴だ」

 彼の少年は、帝都を滅ぼすかもしれない、と、ふと思った。
 

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